「アニメのまち」のキャリア教育

松倉 由紀(東京都)

相手にあわせた「翻訳作業」

 アニメ産業を活用した授業を行う事業のサポートをしています。2009年から事業に関わっていますが、当初は、産業界側がやりたいと言い始めた授業だということで、学校関係者の反応は必ずしもいいものではありませんでした。

 プロジェクトを進めるためには、アニメという教育資源の価値がどこにあるのかを発掘し、教育課程の中でどのように活用でき、どんな効果が期待できそうなのか。これらを、具体的な「授業案」という学校の言葉に翻訳しながら表現する必要がありました。こうして、少しずつ、産業界と学校をつなぐ「接点」を作っていくことがスタートでした。

 また、先生たちとの会話でも、「役所から言われたことだから」と、受け身にさせてしまいがち。「アニメは学習素材です。先生のやりたいことや想いがいちばん大事なんです」と繰り返し、先生から子どもたちの状況や想いをじっくりと聴き、先生の味方になる、というのも大事なことでした。 

産業界と学校をつなぐ触媒に。

 アニメを活用した授業に限らないかもしれませんが、「プロの凄さ」を実感するシーンが沢山あります。ひとつは、産業界のプロ。ゲスト講師の方々です。その産業で長年仕事をしてきた人だからこそ言えるアドバイスや仕事の技は、子どもたちにとっても本当に目をみはるものです。

 そして、もうひとつのプロは、先生たち。ゲスト講師の語る言葉は、子どもたちにとってむずかしいこともあるのですが、そこは先生たちが、噛み砕いて・言い換えて、その子の状況に合わせて指導をされています。目の前の子どもたちにとって必要なものは何か、これは、毎日子どもたちと向き合っている先生にしかわからないものです。

 産業界が参加する授業は、こうした二つのプロの協働によって成り立っていて、私たちキャリア教育コーディネーターの役割は、この「協働」が生まれる場をいかに作るか、いかにつないで出会わせることができるか、ということだと思いました。     


 【プロフィール】

大手通信教育会社・人材派遣会社を経て、2008年から、キャリア教育コーディネーターとして活動。企業による出前授業プログラム・教材の開発・実施コーディネート、PBL型・体験活動型キャリア教育カリキュラムの構築を行う。 

<事業実績> キャリア教育コーディネーター養成(ソシオエンジン・アソシエイツ)

   練馬区「アニメ産業と教育の連携事業」 事業推進

   キャリア教育プログラム「イベプラ」(NPO法人ブラストビート)開発

 http://ax-factory.wixsite.com/guest-teacher-lab